アルバム
タイトル:Virtual Rabbit
アーティスト:平沢進
曲数:10
一言感想
前回が科学的なSFならこっちは宇宙と自然のSF そして反戦のメッセージ
感想
平沢進の3枚目のアルバム。今回はクラシックやカントリー風の曲もあるがドラムやシンセサイザーによりテクノな感じになっている。
月や宇宙がコンセプトなのか宇宙を感じるタイトルもある。そしてもう一つのコンセプトとして「反戦」もあると思う。
「我が心の鷲よ 月を奪うな[プラネット・イーグル]」や「UNDOをどうぞ」は明らかに毛色が違う。「BLUE LIMBO」にあってもおかしくない曲だ。
発売されたのが1991年なので「湾岸戦争」のニュースを見て作ったのかもしれない。同時期の反戦テクノと言えばSOFT BALLETの「愛と平和」だが、愛と平和が怒りに満ち溢れているのに対してVirtual Rabbitは「悲惨さを淡々と伝える」だけである。
「アメリカを風刺しているように見えて実際は戦争する国全ての風刺」と「日本軍の戦地の体験」という2つの事実を淡々と伝えているだけである。
曲調
全曲通して「寂しい感じ」がある。
このアルバムは全曲メロディー、音色、歌詞のいずれかが寂しい。まるで「これが終わると皆別々に散らばってしまうパーティー」の感じがする。
現に4作目からは完全ソロ制作に変わる。この頃から確定していたのか不明ではあるが。
ストリングスやブラス、アコースティックギターのようなアコースティック楽器の音色を大々的に使っているが時空の水のようなテクノ感が全く無いという訳では無い。
それはドラムやシンセサイザーの音色が聞こえるからかもしれない。特にドラムはドラムマシンの中でも「わざとらしい音源」を使っているように思える。
今作はギターが大々的に使われている。しかも「嵐の海」、「バンディリア旅行団」、「UNDOをどうぞ」は全てギターソロがある曲でエフェクターは同じだが全く違って聞こえる。
- 元気いっぱいで嵐をイメージしているかのような嵐の海
- 眺めの良い所で座りながら弾いている感じのバンディリア旅行団
- 後悔を聞いて「あなたは悪くないよ」って優しく言う感じのUNDOをどうぞ
これは平沢さんの表現力のお陰だと思う。
歌詞
今回も詩的で小説を読んでいる感じである。そして「自然」を歌っている歌詞が多い。
ただ自然を歌っている歌詞でも何故か「宇宙が舞台のSF」小説を読んでいる感じだ。
何故だかわからないが「地球以外の自然豊かな惑星」に行った感じがする。
そして月の兎がテーマだから宇宙も歌っている。しかし月の曲は2曲しかない。
ライブ
実を言うと、このアルバム収録曲は近年のライブでは全くやっていない。
近年のライブでも頻繁に演奏している「サイエンスの幽霊」とは真逆である。
さらに半数の曲はツアーでは演奏はされたものの、その後のライブでは全くやっていない曲である。
SIRENに並ぶ「セットリストに入らない冷遇されているアルバム」である。
総評
この作品で「ゲストをバンバン呼んで一緒にやる」アルバムは終わり、次回作からは「ゲストを一切呼ばずに個人で作成する」のにシフトチェンジする。
そして、その後に「P-MODEL解凍」というビッグイベントがある。解凍期はメンバー全員が人気がある人なので今でもファンが多い。そしてP-MODELのイメージである「テクノ」になる。
解凍期をレビューする前に同時期のテクノを比較したい。
曲別レビュー
- 嵐の海
- バンディリア旅行団
- 我が心の鷲よ 月を奪うな [プラネット・イーグル]
- ヴァーチュアル・ラビット
- UNDOをどうぞ
- 山頂晴れて
- 静かの海
- 死のない男
- 太陽の木
- ロシアン・トビスコープ