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映画レビュー26 PERFECT DAYS

映画

 映画名:PERFECT DAYS

ジャンル:人間

備  考:Prime Videoで視聴

一言感想

トイレ清掃を通してみる男の生き様 芸術的な映画だけど易しい

感想

2023年に公開された映画。

あるトイレ清掃員の生き様を通して仕事への情熱や人生などをを追う。

音楽は流れるが少しだけな上、主人公の平山も無口なので、とても静かな映画である。

なので、かなりの芸術的な映画へとなっている。しかし話は分かりやすい。

ただ凄い静かな映画で日常系なので見てなかったら展開が早く進んでしまうのでよそ見厳禁の映画である。

日常

この映画の真骨頂は同じ日常は全く無いって事である。

ただアパートから職場のトイレ清掃に行って掃除してご飯食べて寝るだけではない。

聞く曲、出会う人、行く飲食店の客など違うことがある。

日常→ドラマが起きるの繰り返しである。

ドラマが起きるって行っても後輩が片思いしている人に会う、姪が家出して平山に会いに行く、気まずい現場を見てしまうなど日常にありそうなドラマである。

この映画は、それのミルフィーユである。

ただそれを含めても同じ日常なんて無い。そんな映画である。

平山

簡単に言えば変わり者である。そもそもこの時代に風呂なしアパートに住んでいるだけで変わり者であるが。

見知らぬ誰かとマルバツゲームをやっていたり、ホームレスみたいな男性を見ていたり、神社にあった新芽を持ち帰って植えるなど奇行をしている。

さらに無口である。冒頭数分間は本当に息だけである。

ただ変わり者ではあるが、そうやって日常に幸せを探しているようにも見える。

特に車でカセットテープを流していたり夜中にデスクライト一個で本を読んだりするのはそういうことであろう。

変わり者のように見えて、ただ幸せを探している人にも見える。

この映画は平山のバックストーリーなどは教えてくれない。視聴者の解釈に委ねられている。

どうしてトイレ清掃員を選んだのか?なぜ妹と仲違いしているのかなどは分からない。

そこは芸術的な映画である。

音楽

前述の通りカセットテープから流れる音楽が唯一のBGMである。

しかも車内だけなので全編で流れない。

流れている曲も平山が青年時代に聞いていたような洋楽のタイトルが多い。

そんな中、邦楽を一つだけ聞いている。それが金延幸子さんの青い魚である。

最近の曲のように聞こえるが1972年の曲である。

名曲は色褪せない。

監督

実はこの映画はヴィム・ベンダースさんというドイツの映画監督が撮っている。

なので邦画に見えるようで洋画なのである。

そして見た後で分かったことだが小津安二郎フォロワーの監督である。そう東京物語の監督である。

本当に好きで尾道(東京物語の主人公達が住んでいた街)の写真展を開催するほどである。

分かった後で見ると東京物語の影響が意外と見て取れる。

平山という名前も東京物語などで笠智衆さんが演じていた役名から取った。

俳優

平山を演じたのは役所広司さんである。

八犬伝曲亭馬琴を演じていた。八犬伝の役所さんはエネルギッシュかつ罵ることも多々ある気難しい作家であったが平山は終始、落ち着いていて口数も少ない。

そして異色なのは日曜劇場を見て分かるが社長やリーダー、人気作家など上や人気の立場を演じることが多い役所さんが徹底的にトイレ清掃員という下の立場を演じている。

後輩のタカシを演じたのは柄本時生さんである。ご存知の通り柄本明の息子であり柄本佑の弟である。

この2人の凄いところは芸能人が役を演じているように感じない点である。そこら辺にいるただのおじさんと若者にしか見えない。

平山の妹を演じたのは麻生祐未さんである。アトムの童、トリリオンゲームと、このブログでレビューした作品のほぼ常連みたいになっている。

日曜劇場的に言えば宮沢ファミリーオフィスの社長とこはぜ屋の社長(もしくはテントのリーダー)が兄妹という感じである。

最後には三浦友和さんも出る。ご存知の通り山口百恵さんの夫である。

実は相棒でお馴染みのヒロコママを演じた人も出ている。見た目はオネエと真反対だが口調はヒロコママなので分かりやすい

サイズ

この映画はなんと16:9ではなく4:3で撮られている。

簡単に言えば昔のアナログ放送みたいな画角で撮られている。

勿論、お金を節約したいからではない。あえて古い画質や古いサイズにこだわったのであろう。

その結果、平山という人の日常が劇の一部になっている。

因みに劇場でも同じだったようだ。贅沢な4:3の映画である。

総評

トイレ清掃員である平山の日常にフォーカスした映画であった。

平山は一見、変人に見えるが些細なことで幸せを見つけられる凄い人にも見える。

幸せや日常を噛み締めろって映画でもあった。

さらに舞台である日本を活かしている描写が多い。

これは日本人監督ではなく外国人の監督だから出来る話である。