egon's everything review

万物はレビュー可能である by egon

アルバムレビュー20 AURORA

アルバム

  タイトル:Aurora

アーティスト:平沢進

    曲数:10

一言感想

平沢進アンビエント トビラ島に気を取られがちだが他の曲も大作が多い

感想

平沢進の4枚目のアルバム。このアルバムからゲストを呼ばずにパソコンと自分の機材だけで曲を作る完全ソロ制作に移行する。

このアルバムは、それまでの作品どころか平沢進のアルバムの中でも結構異色のアルバムである。

まず3分程度の曲が「呼んでるベル」しかないということである。

他は4分を超えておりトビラ島に至っては13分以上もある。そしてLOVE SONGも7分程度である。

邦楽のポップアルバムとしては結構長い曲が多い感じがする。

そしてボーカルの高音パートが少ない曲が多い。

平沢さんのボーカルといえばこの当時の男性としては結構高い高音というイメージがあるがこのアルバムでは基本的に中低音で歌っている。

なので男性の場合は無茶やテクなく歌える曲が多いアルバムである。

そしてテンポが低めの曲も多い。

平沢進の曲はアップテンポな曲が多いイメージがあるがこのアルバムは結構スローテンポな曲が多い。

など平沢進作品にしては異例のアルバムである。まるで自分は激しくて短い、高音に頼る曲以外もできるみたいなアルバムである。

曲調

平沢進のアルバムの中でも一番リラックスできるアルバムである。

ゆったりとした曲調が多い。そして楽器も弦楽器や管楽器を多用している。

さらに平沢進の特徴である激しめのギターも全く無い。

思ったのが平沢さんとアンビエントは相性がいいということである。

元々CMのBGMとかデトネイター・オーガンのサントラ、自然ドキュメンタリーのサントラとかを担当していたので元々の得意分野なのは知っている。

ただアルバムになるとインパクト強めの曲を作る方を重視してしまう。今作は声を聞かせる為のアルバムらしいがその分オケがアンビエントよりである。

トゲトゲした音で有名な電子音で有名だが、このアルバムだけは結構丸いし電子音も使わない。

そして歌ものアンビエントは珍しいので、この路線の平沢さんの曲をもっと聞いてみたかった。

歌詞

今回も詩的で小説を読んでいる感じである。ただ前作以前とは異なり1曲1曲が短編小説みたいな感じである。

そして今回も自然をテーマにした歌詞が多い。風、水、火など色々な物を歌っている。

これは宮沢賢治の影響が大きいのかもしれない。現にイーハトーブという言葉も出てくる。

今までは物体や風景など目に見える物を歌っていたのが、ここから自然現象や感情など目に見えない物が中心に歌う。

次回作は感情が中心に変わっていく。

ライブ

これから平沢さんのライブの定番とも言える「インタラクティブ・ライブ」が始まる。

インタラクティブ・ライブというのは客参加型のライブであり声を出したり仕掛けを動かすことで分岐して曲や終わりが変わるライブのことである。

今や登場人物も多い上に複雑化した上、他のライブにも共通するキャラクターがいる。(まぁ登場人物が複雑化してくるのは2003年以降ではあるが)

しかし、この時期は敵キャラしか共通するキャラクターは出てこない。

ただ映像化はされておらずボーナスステージのTOKYOパラネシアンだけがこの頃のインタラクティブ・ライブの唯一の映像である。

この頃のインタラクティブ・ライブはまだ慣れていないので今のような没入感や劇場感はない。

まだ手探り感があったりストーリーが練られてない時代のライブが見られないのは残念である。

総評

完全ソロ制作アルバムの第一弾であるが結構な手応えを感じる。

声を中心したのでオケは手抜きと本人は言っているがオケも結構作り込まれている。

さらにボーカルは中低音が多いので男性でも歌いやすい曲が多い。

現に本人も歌いやすいのか色々なライブで頻繁に出てくる曲が多い。

そして次回作からは平沢さんが東南アジアの国タイに関心を持つ。

そこで色々な価値観が変わったのだろう。特にSP-2*1との出会いで色々と変わった。

影響が色濃く残っている。

曲別レビュー

  • 石の庭
  • LOVE SONG
  • オーロラ
  • 力の唄
  • 舵をとれ
  • スノーブラインド
  • 風の分身
  • 広場で
  • トビラ島(パラネシアン・サークル)
  • 呼んでるベル

*1:現代風に言えばトランスジェンダー