アルバム
タイトル:時空の水
アーティスト:平沢進
曲数:10
一言感想
テクノのイメージが強い人のテクノから完全に離れているアルバム
感想
平沢進のファーストアルバム。P-MODEL凍結から1年後にソロ名義で発表したアルバムだ。
平沢進名義ではあるが実際は
- 完全な新曲: 6曲
- SCUBAのセルフカバー曲: 1曲
- P-MODELで発売するはずだったモンスターのボツ曲: 3曲
と4曲はP-MODEL時代に作られた上「コヨーテ」、「仕事場はタブー*1」はP-MODELのライブでも演奏されている。
「デューン」はP-MODEL時代の没曲ではあるがライブで演奏されていない。
聞いてみると使っているのはシンセサイザーだと分かるが音色はシンセサイザーとはかけ離れている弦楽器や管楽器を多用している。
さらに平沢さんの特徴とも言える攻撃的なギターやギターソロもそんなにない。アコースティック・ギターを使っている曲を除けばギターの音色も抑えめである。
テクノっぽいのはソーラ・レイくらいである。他は民族音楽だったり、クラシック音楽的である。
ここまでテクノっぽくないアルバムは時空の水くらいである。因みに救済の技法までテクノ色は増えていき一旦「賢者のプロペラ」で遠ざかり「BLUE LIMBO」でまたテクノっぽくなる。
平沢さんのテクノっぽくないアルバムといえば「現象の花の秘密」があるが、これは「音色はかけ離れているがメロディでテクノっぽい」のである。
ゲスト・ミュージシャンも多い。ただベースやドラムのようなバンドの楽器のゲストが居る曲は少なく大体がコーラスのような声かストリングスやピアノのようなクラシック楽器である。
そして戸川純を平沢さんは気に入ったのかVirtual Rabbitまで参加する。
曲調
平沢さんのアルバムにしては物凄い爽快な曲が多い。
「P-MODELという枠から解放された喜び」が曲にも現れている。
前述の通り使っているのは「KORG M1」というシンセサイザーと「Roland R8」というドラムマシン、ギター、そしてゲスト・ミュージシャンの声と楽器だけである。
2024年に聞いてもチープではあるが「本物に近く聞こえる」のでこれは完全にシンセサイザーの技術の進歩である。
そしてドラムマシンもドラムマシンと言わなければ気が付かない程、本物に近い。
ギターだが今作は「アコースティック・ギター」の方をよく目立つ。エレクトリックギターはアクセントとして使っているだけである。
そして間奏もギターソロは魂のふる里くらいだが大人しめであり大体はシンセサイザーソロである。
歌詞
ソロになっても歌詞は分かりづらいが今回は、かなり詩的で小説の一節を読んでいるようである。
平沢進による不思議な小説の音楽付き朗読を聞いているようだ。
そして金星の歌詞は平沢ソロの中でもLOVE SONGと並ぶ感動する歌詞なので一度は聞いてほしい。
ハルディン・ホテルの世界観は次回作でも共有されているのでこれは覚えたほうが良い。
ライブ
ライブではチープになってしまう曲がある。
それが「金星」である。アコースティック・ギターの生演奏を想像すると思うが実際は「時空の水ツアー」と還弦以降である。
では大体のライブではどうやっているのかというと「シンセサイザーの音源」を使っている。
なのでリアルではないチープなギターのせいで金星の魅力が半減してしまう。
平沢三幕三時間のライブ映像ではアコースティック・ギターを弾いているように見えるがこれもパフォーマンスで実際は音源である。
そして今回はライブでも打ち込み主体なのであまり変わらない。ギターが増えたくらいである。
総評
平沢さんのファーストアルバムだが物語的な曲が多い。
大部分がシンセサイザーを使っているがテクノではないという不思議な感じがする。
今作は完全なソロというよりモンスター収録予定曲やセルフカバー曲もあるのでP-MODELの残り香もある。
次回作はSCUBAのセルフカバー曲が1曲あるだけで後は新曲である。
そして平沢ソロはインタラクティブ・ライブの兼ね合いで「コンセプトアルバム」が多いが今作は違う。次回作はコンセプトアルバムになる。